開発現場の声 – スマートフォンアプリ『イドラ ファンタシースターサーガ』
– セガゲームス–

「ファンタシースター30周年記念作品」として好評配信中のiOS/Androidアプリ『イドラ ファンタシースターサーガ』。ロウとカオスという2つのパーティーを駆使するバトルシステムや、キャラクターを成長させることで勢力を分岐できる運命分岐システムなど、オリジナル要素を詰め込んだタイトルとなっています。

本作ではバトル中の必殺技にムービーテクスチャを使用したり、ストーリーの次回予告を動画で流したりとムービーを随所に使用しており、スマートフォンでの容量を抑えるべく、CRIWAREのムービーミドルウェア、CRI Sofdec2をお使いいただいています。

今回は、それらのムービーの制作方法やSofdec2使用方法について開発現場の方にお話を伺いました。

写真左より
セガゲームス・玉村 道一氏(テクニカルアーティスト)
セガゲームス・藤本 大介氏(リードプログラマー)
セガゲームス・高橋 保裕氏(セクションマネージャー)

-CRIのミドルウェア導入のきっかけをお聞かせください。

藤本:そうですね。今回のタイトルではBGMが多かったり、フルボイスでもあったので、自然とCRIWARE(主にADX2)を使う流れで使用しました。

玉村::当初、Sofdec2の導入は検討していなかったのですが、ゲーム内での長尺の映像や演出が多かったので、もっと映像を使うほうが派手なことができるんじゃないか?というところで、Sofdec2も使うことになりました。

藤本:共同開発をしている会社さんでも以前CRIWAREを使ったことがあり、まずはサウンド周りで使って、後から動画の方でも使ってみようかということになりましたね。

-Sofdec2ではどのコーデックを使いましたか?

藤本:最近使えるようになったVP9を使用しました。

玉村:最初は従来形式のSofdec PrimeやH.264を使っており、特にH.264は再生性能も圧縮率も高くて問題無かったのですが、ハードウェアでデコードするので端末性能に依存する、というのが課題でした。
そんな中、CRIのサポートの方から圧縮率が高く、かつ端末への依存が無いVP9コーデックが使えるようになったよ、ということを聞きまして、VP9に差し替えた、という流れですね。 ほぼファイナル前でVP9に差し変えました(笑)

高橋:スケジュール的にギリギリの時期でしたが・・・。

藤本:すごく容量が小さくなると聞いたので・・・(笑) いや、それ以前にダウンロード時間を改善しないとって問題があったんですよね。ゲームの立ち上がりが遅くて、調べてみたらムービーのデータがすごく重かったんです。

玉村:VP9にすることで半分以下の容量になりましたね、ダウンロード時間も。最初に使っていたコーデックから比べると3分の1とか4分の1くらいになっているはずです。

藤本:一緒に使っていたADX2側のサウンドも圧縮率を上げました。

玉村:正確なダウンロード時間は計っていないのですが、体感では大分短縮されましたね。

-VP9を使っている箇所はどのようなシーンでしょう?

藤本:章の終わりに予告の動画を流すんですが、そこのムービーと、エレメンタルブラスト(キャラクターの必殺技)のところで使っています。

玉村:エレメンタルブラストはアルファプラスムービー(CRIの独自規格の透過ムービー)を使っています。ステラ、ユリィあたりの主役格キャラクターが主ですね。

高橋:主役級だけでなくレアリティ度の高い星5キャラクターにも結構使っていますね。

藤本:最初はUnityタイムラインを用いたアニメーション演出において、動画はそんなに使うつもりなかったんですが、動画使って組み合わせると迫力出るね、という話になって。
当初そんなに容量を想定していなかったのに皆結構頑張って作っちゃって、容量が増えて困ったな~ってところにVP9の提案があったので非常に助かりました。 CRIさんには最初、全画面再生しかしないと話をしていたのですが・・・(笑)。

玉村:ムービー演出が増えるきっかけは、イドラ(ケートス)を作っているとき、エフェクトで作るのがしんどかったんですよね。そこで、ムービーでやればいいじゃないかと。使い始めたのがきっかけです。

-エレメンタルブラストはムービーだけでなく、リアルタイムエフェクトもかなり使っていると思いますが、その演出上の手段の選択の基準は何でしょうか?

玉村:開発会社さんの得手不得手を考慮して選択しています。Unityを使っている会社さんであればUnityで作ってもらった方が早いですし、映像制作会社さん等、映像に特化したところだと映像にしてもらったり。

藤本:エレメンタルブラストは様々な会社に制作をお願いしているのですが、その会社の得意なところに合わせてという感じですね。

玉村:あと、演出でどうしても難しそうな場合は映像で、とか。

-2Dとの組み合わせは技術的に難易度が高そうですが、実際の制作はどうでしたか?

藤本:そうですね、Unityのタイムラインと映像を組み合わせたいという意図は最初からあったので、その前提で検証を進めていて、それでぴったり合うようになったので作り始めました。

玉村:制作途中、1フレーム合わない等引っかかるポイントがあったので、最終的にはかなり緻密に調整を行っています。

-タイムライン上のレイヤー構造はどのような感じだったんでしょう?

玉村:キャラクターのアニメーション分岐、カットイン、エフェクト等のタイミングでそれぞれ管理していました。エフェクトはUnity標準のパーティクルを利用していますね。
あとShurikenとか。 例を出すと、ステラのエレメンタルブラストの羽の演出はまさにそういう組み合わせの調整を行っています。

-次回予告の画質はどう調整されたんでしょうか。

玉村:サポートの方からいただいた数値(960×540 1.4mbps~1.5mbps)を参考に組み込んでいます。解像度と、処理落ちしない数値ということで。トライアンドエラーはCRIさんの方でやっていただきました。

高橋:社内でチューニングするにはとても間に合わなかったので、有難かったです(笑)。

-アルファプラスムービーの素材の作り方を教えてください。

玉村:AEで素材を作って、加算の部分を分けて、Sofdec2でエンコードしています。
光の演出や攻撃の演出とかも全部AE上で作っています。Trapcodeとか色々なAEプラグインを使って作っています。
Unity上でキャラクターの配置を置いてムービーを作って、AE上にもっていき、演出を作りこんで演出のデータをUnity上に戻す、というような流れですね。

-サポートについてはいかがでしたか?

藤本:定期的に社内にサポートに来てくれているので、心強かったです。特に機種ごとの問題やコーデックのパフォーマンスを細かく教えてくれたりしたので有難かったですね。

-ありがとうございました。