ADX2を使いこなして粒子系サウンドを作成してみる【グラニュラー合成】

ADX2はサウンドミドルウェアですが、サウンドデザインツールとして活用することもできます。

今回は、Atom Craftのランダム化・エンベロープ機能を使用して、
「パラパラ…」「ゴロゴロ…」といった粒子系サウンドを作成するテクニックについて見ていきましょう。

ADX2内で「小さな種音(grain)を切り出し」→「発音順序をランダム化」→「素早く連続再生」
という流れを踏むことで、あらゆる粒子系サウンドを作成できます。


 

グラニュラーコンテナの作成

  • キューを作成し、GrainContainerという名前を付けておく。
  • GrainContainerキューに素材をドラッグする。
  • Create Sequence波形上に、トランジェントマーカーを作成します(InspectorのStart Positionを使用すると、正確なタイミングを指定できる)。
  • 波形を選択した状態で、「インスペクター」の「EG」タブをクリックし、次のように設定します。
    • EGアタック= 25
    • EGディケイ= 25
    • EGサスティン= 0
    • EGアタックカーブタイプ= S字曲線
    • EGディ系カーブ= S字曲線

これにより、7つの短い音の粒子が準備され、これらはデフォルトではランダムに選択されます。
例えば手持ちのサウンドエディタで、7つの断片を切り出してランダムキュー設定で配置することも可能ですが、上記の方法であれば、より手っ取り早く手持ちのサウンドのグラニュラー合成を試したり、エンベロープの長さやカーブの調整を行うことができます。

「エンジン」の作成

  • 「Polyphonic」キューを作成し、GrainEngineという名前を付けます。
  • GrainContainerをGrainEngineキューの新しいトラックにドラッグします
  • トラックを選択した状態で、インスペクタで以下を設定:
    • 再生タイミングランダム = 15
    • 自動繰り返し間隔= 5
    • 自動繰り返し回数= 50
    • GrainContainerトラックで、 "オートメーションなし"タブを選択し、新規オブジェクト -> トラックの作成 -> ボリュームをクリック。
    • 山なりのボリュームエンベロープを描く

これでサウンドを再生すると、「パリパリ…」という粒子サウンドが再生されます。サウンドがエンベロープの長さよりも早く終了する場合は、自動繰り返し数を高く設定することで解消します。グラニュラー合成は実験的な手法なので、設定値を微調整して最適なものを探していってください。

ボイスリミット制限

サウンドを再生した際、ボイスが1つのサウンドに対して50回も鳴ることがわかります。
先ほどの「自動繰り返し回数= 50」が反映されている結果ですが、今回、エンベロープの形状のように数回の粒子再生で充分のため、以下の手順でボイスリミットを設定しましょう。
  • プロジェクトツリーで、ボイスリミットグループを右クリックし、新しいボイスリミットグループを作成します
  • インスペクタにて、以下の設定を行います
    • 名前= GrainLimiter
    • 音声制限= 6


次に、GrainContainerキューに戻り、リストエディタでボイスリミットグループをGrainLimiterに設定します

さらにGrainEngineキューのインスペクタにて、ボイスビヘイビアを "ボイス停止(ボリューム0時)"に設定します。これにより、音声が聞こえなくなった瞬間、別の声を鳴らすことが可能となります


これで、最大ボイスが6に制限されながらも、何回でも再生することができるようになりました。

エフェクトの追加

現状ではガラス音がフラットすぎるため、以下の手順でランダム性をサウンドに追加しましょう。
タイムラインでGrainContainerキューを選択し、次のように設定します。
  • ピッチランダム範囲= 250
  • Pan3D角度ランダム= 90

この設定によって、空間的な多様感とピッチのランダム感が生まれます。また、バスを設定し、リバーブやディストーションなどの処理を行うことで、よりサウンドをカスタマイズすることもできます。

おわりに

今回ご紹介したアイディアは、グラニュラー合成の初歩的なテクニックです。
粒子の長さ、再生間隔、ボイスリミット。エンベロープの形状によって、全く異なるサウンドテクスチャを作成することもできるでしょう。