- ASRに特定のパラメーターを指定することで、立体音響のレンダリングを行うことができます。 ボイスの出力先として立体音響のASRラックを指定すると、その立体音響のフォーマットで再生されます。
CRI ADXの立体音響機能について
- CRI ADXで再生・レンダリングできる立体音響は、下記の3種類に分けられます。
- 上記の各立体音響の再生方式に対し、ヘッドホン向けの バイノーラル再生 を行うことができます。
また、立体音響を適用したくない出力には、パススルー再生 を行うことができます。
下記の図は、それぞれの立体音響の再生の大まかな流れをまとめたものです。
- 本ページでは立体音響機能を使用する際に必要になる設定についてプラットフォームで共通しているものを記載しています。
各プラットフォームで固有の情報などは「 立体音響機能に関する特記事項 」を参照してください。
チャンネルベース(マルチチャンネル)
- CRI ADXには、チャンネルベースの機能として以下の2つが用意されています。
- 最大 7.1.4ch の音声素材の再生
- 最大 7.1.4.4ch のパンニングを使用したミキシング
最大 7.1.4ch の音声素材の再生
- CRI Atom Craftを使用し、最大 7.1.4ch の音声素材を使用することができます。 詳しくは、CRI Atom Craft マニュアルの 7.1.4ch を参照してください。
最大 7.1.4.4ch のパンニングを使用したミキシング
- 水平面上だけでなく、上下方向のスピーカーへの出力を想定したミキサーを作成可能です。
これにより、モノラル音声やステレオ音声を頭上のスピーカーから出力したり、バイノーラル処理を用いてヘッドホン環境であたかも下方向から音が鳴っているかのような演出を行うことが可能です。
- ASRのスピーカー構成を以下の値に指定される場合、それに応じたASRが作成されます。
- ASRのスピーカーマッピングは直接指定するか、出力チャンネル数から自動的に指定する方法があります。詳しくは以下を参照してください。
- 注意
- 5.1.2ch は 7.1ch と同じ 8ch のため、デフォルトではASRの出力チャンネル数からの自動設定ができません。 5.1.2ch の再生を行うためには、次のうちいずれかを設定してください。
- プラットフォームが 7.1.4ch など指定した出力チャンネル数に対応していない場合、出力チャンネル数とプラットフォーム の通りプラットフォームの対応チャンネル数への変換が行われます。 各プラットフォームの対応チャンネル数に関しては、「 機能一覧と実装状況 」を参照してください。
- チャンネルベースの立体音響のASRの作成は、必ずしも CriAtomExAsrConfig::sound_renderer_type や CriAtomExAsrRackConfig::sound_renderer_type に ::CRIATOM_SOUND_RENDERER_SPATIAL を指定する必要はありません。
ただし ::CRIATOM_SOUND_RENDERER_SPATIAL を指定すると、バーチャルサラウンドのバイノーラル再生が可能になります。
バイノーラル再生については「 バイノーラル再生 」を参照してください。
シーンベース(Ambisonics)
- Ambisonics はサラウンド音声フォーマットの一種で、一点を中心にした球面上の音をまとめて収録・再生することができます。
CRI ADXでは、Ambisonics再生について、以下のように対応しています。
- CRI ADXでは、最大3次のFuMa maxN フォーマットおよび ACN SN3D (AmbiX)フォーマットの音声素材に対応しています。
Ambisonics 音声素材の再生については CRI Atom Craft を用いた ADX2 用データファイル化を推奨しています。
設定方法などの詳細は 「 Ambisonics 」を参照してください。
Ambisonics 音声の再生にも3Dポジショニングの機能を利用してリスナーの向きを変更することで音声素材を回転させるといった音響表現が可能です。
3Dポジショニングに関する設定について詳しくは 「 3Dポジショニング 」を参照してください。
プラットフォームのサウンドハードウェアが Ambisonics 音声素材の再生に対応している場合、再生に関する処理をプラットフォームに任せることで負荷を軽減することが可能です。
当該プラットフォームのサウンドハードウェアが Ambisonics 音声素材の再生に対応しているかどうかは「 機能一覧と実装状況 」を参照してください。
オブジェクトベース(位置情報を持つモノラル音源)
- オブジェクトベース再生は、モノラル音声とその位置情報を使用して再生を行う機能です。
CRI ADXでは、オブジェクトベース再生について、以下のように対応しています。
- 覚え書き
- オブジェクトベース再生は従来の3Dポジショニングと同じく、ソースとリスナーの座標から計算した音源の位置情報を使用します。
しかしオブジェクトベース再生は3Dポジショニングとは違い、ADX内で5.1chや7.1chなどマルチチャンネル音声への変換(パンニング)、及びミキシングを行いません。
- CRI Atom Craft を使用してデータをオーサリングしている場合、データに対し「オブジェクトベース再生」を指定することができます。
CRI Atom Craft によるデータ連携時、、オブジェクトベース再生に必要となるオブジェクトベース再生用のASRラックは ACF 登録時に自動で作成されます。
データ連携を使用せず、プログラムにてオブジェクトベース再生用のASRラックを作成するには、 CriAtomExAsrRackConfig::sound_renderer_type に CRIATOM_SOUND_RENDERER_OBJECT を指定してラックを作成してください。
この時、 CriAtomExAsrRackConfig::speaker_mapping には必ず CRIATOM_SPEAKER_MAPPING_OBJECT を設定する必要があります。
プラットフォーム機能を使用した再生
- 一部のプラットフォームは音声と位置情報をアプリケーションから受け取り、プラットフォームの機能でオブジェクトベース再生を行うことができます。
ADXでプラットフォーム機能を使用したオブジェクトベース再生をするには、オブジェクトベース再生用ASRラックの作成時の CriAtomExAsrRackConfig::output_channels に CRIATOMEXASR_NUM_OBJECT_BASED_AUDIO を指定します。
プラットフォームがオブジェクトベース再生機能を持たない場合、音声は フォールバック再生 されます。
各プラットフォームのオブジェクトベース再生の詳しくは「 立体音響機能に関する特記事項 」を参照してください。
- 注意
- プラットフォーム機能を使用してオブジェクトベース再生を行うと、その後の信号処理は全てプラットフォームに委ねられ、ADXからは一切干渉することができません。
また、プラットフォームの機能を使用するためプラットフォーム間で同一の結果を得ることはできません。
バイノーラライザーを使用した再生
- ADXに搭載されているバイノーラライザーを使用し、バイノーラル化されたステレオ音声として再生します。
単音毎にバイノーラル処理が行われるため、チャンネルベースからのバイノーラル処理より高精度の定位が得られます。
より詳しくは「 バイノーラル再生 」を参照してください。
フォールバック再生
- 音声をオブジェクトベースとして再生できなかった時、代わりにメイン出力のASRラックなどチャンネルベースで再生します。
ADXではこれをフォールバック再生と言います。
- フォールバック再生が行われる条件は以下の通りです。
- フォールバックの設定は、CRI Atom Craft によるデータ連携、またはプログラムで直接指定します。
データ連携
CRI Atom Craft の オブジェクトベースオーディオ用の出力ポート 設定で行います。
フォールバック先としてメイン出力のASRラック、もしくは専用のASRラックを使用するかを指定することができます。
プログラム指定
Atomライブラリ Ver.2.28.00以降では、 ::CriAtomExAsrRackSpatialObjectConfig::fallback_rack_id にフォールバック先の ASRラックID を設定し、 CriAtomExAsrRackConfig::context に ::CriAtomExAsrRackSpatialObjectConfig のアドレスを指定してください。
それ以前のライブラリでは、 CriAtomExAsrRackConfig::context にフォールバック先のASRラックID( CriAtomExAsrRackId )のアドレスを指定してください。
- いずれの方法でもフォールバック先が指定されていない状態でフォールバックした場合、その音声は再生を停止します。
また、フォールバック再生された音声は、フォールバック先ASRラックの MasterOut バスにルーティングされます。
このため MasterOut バスにエフェクトを設定したDSPバス設定がフォールバック先のASRラックに適用されている場合、そのエフェクトの影響を受けることに注意してください。
パススルー再生
- プラットフォームによっては、通常のチャンネルベースで再生した音全てに固有の立体音響処理が加えられる場合があります。
パススルー再生は、UI、BGMなど立体音響処理の適用が望ましくない音声の再生方法です。
パススルー再生した音声は、ADXとプラットフォーム両方の立体音響処理がかからなくなります。
- CriAtomExAsrRackConfig::sound_renderer_type に CRIATOM_SOUND_RENDERER_PASSTHROUGH を指定することでパススルー再生用のASRラックを作成することができます。
立体音響処理を回避する点以外は、通常のチャンネルベース再生と代わりません。